Google Agents CLIとは何か
2026年4月22日、GoogleはAIエージェント開発を効率化する新ツール「Agents CLI(agents-cli)」を正式リリースしました。Google Cloud Nextで発表されたこのツールは、AIエージェントの作成から本番環境へのデプロイまでを1つのCLIで完結させることを目的としています。
Agents CLIの特徴は「AIコーディングエージェントのためのツール」であるという点です。Gemini CLI、Claude Code、Cursorといったコーディングアシスタントに対して、Google CloudのAIエージェントスタック(Agent Platform、Cloud Run、A2Aインテグレーション)への直接のアクセスを提供します。
つまりAgents CLI自体はコーディングエージェントではなく、既存のコーディングエージェントがGoogleのADK(Agent Development Kit)を活用したエージェント開発において正確な判断を下せるよう支援するツールです。
主な機能・特徴
7つのスキルモジュール
Agents CLIはADKライフサイクル全体をカバーする7つのスキルを提供します。
| スキル | 役割 |
|---|---|
| Workflow | 開発ライフサイクル管理・モデル選定 |
| ADK Code | Pythonによるエージェント・オーケストレーションAPI |
| Scaffold | プロジェクト作成・アップグレード |
| Eval | 評価指標・スコアリング |
| Deploy | Cloud Run・GKE・CI/CDへのデプロイ |
| Publish | Gemini Enterpriseへのエージェント登録 |
| Observability | Cloud Trace・ロギング連携 |
機械可読なインターフェース
Agents CLIはAIコーディングエージェント向けに設計されており、コーディングアシスタントが自然言語のプロンプトから複雑な操作(スキャフォールディング・評価・デプロイ)を直接実行できます。ヒューマン向けのUIではなく、エージェントが読み取りやすいマシンリーダブルな構造が採用されています。
Google公式スキルリポジトリとの連携
Google Cloud Nextでは同時に公式スキルリポジトリも発表されました。AlloyDB、BigQuery、Cloud Run、Firebase、GKEなど13種類の製品スキルが公開されており、コンテキストの肥大化(Context Bloat)を防ぎながら必要な情報のみをエージェントに提供します。
インストール・使い方
前提条件
- Python 3.11以上
uvパッケージマネージャー- Node.js
- (オプション)Google Cloud SDK、Terraform
対応プラットフォームはmacOS・Linux・Windows(WSL 2)です。
基本的なインストール
uvx google-agents-cli setup
コーディングエージェントへのスキルインストールは以下のコマンドで行います。
npx skills add google/agents-cli
主要コマンド
# 新規エージェントプロジェクトの作成
agents-cli scaffold <project-name>
# 評価の実行
agents-cli eval run
# Google Cloudへのデプロイ
agents-cli deploy
# コード品質チェック
agents-cli lint
# Gemini Enterpriseへの登録
agents-cli publish gemini-enterprise
典型的なワークフロー
agents-cli scaffoldでADKプロジェクトを生成- コーディングエージェントと協力してエージェントロジックを実装
agents-cli eval runでエージェントの品質を評価・スコアリングagents-cli deployでCloud RunまたはGKEにデプロイagents-cli publish gemini-enterpriseでGemini Enterpriseに登録
活用事例・ユースケース
エンタープライズ向けエージェント開発の効率化
従来、ADKを使ったエージェントのスキャフォールディング・評価・デプロイにはそれぞれ個別の手順が必要でした。Agents CLIはこれらを統一したインターフェースで提供し、企業の開発チームが反復的なエージェント開発サイクルを高速化できます。
マルチエージェントシステムの構築
Agents CLIはA2A(Agent-to-Agent)インテグレーションをサポートしており、複数のエージェントが連携するマルチエージェントアーキテクチャを構築できます。Cloud RunやGKEへのデプロイも統一コマンドで完結するため、本番環境への移行が大幅に簡略化されます。
CI/CDパイプラインへの組み込み
agents-cli deploy はCI/CDパイプラインとの統合もサポートしており、GitリポジトリへのプッシュをトリガーにしたAIエージェントの自動テスト・デプロイが実現できます。
評価駆動の開発プロセス
agents-cli eval run により、エージェントの品質をコード変更ごとに定量的に評価できます。評価指標とスコアリングが自動化されるため、エビデンスベースでエージェントの改善を進める開発文化が醸成されます。
他のAIエージェントツールとの比較
Agents CLIは既存のコーディングエージェントを置き換えるものではなく、それらと組み合わせて使うツールです。
| ツール | 役割 | 位置づけ |
|---|---|---|
| Agents CLI | エージェント開発ライフサイクル管理 | Google Cloudエージェントへの専門知識 |
| Gemini CLI | ターミナル操作・高速プロトタイピング | AIコーディングエージェント本体 |
| Claude Code | 自律的なコード編集・git管理 | AIコーディングエージェント本体 |
| Google ADK | エージェントロジックの実装フレームワーク | Pythonエージェント構築ライブラリ |
Gemini CLIはPTYを通じたターミナル操作に強みがあり、スピードとフレキシビリティを重視した設計です。Claude Codeはファイルシステム操作やgitワークフローを自律的に実行する特性があります。Agents CLIはこれらどちらとも連携でき、Google Cloudへのデプロイパスを提供する存在です。
Claude Agents SDK、OpenAI Agents SDK、Google ADKの比較では、ADKはGoogle CloudとGeminiモデルへのネイティブ統合において優位性があり、Agents CLIはその価値をさらに引き出す位置づけです。
まとめ・今後の展望
Google Agents CLIは、AIエージェント開発における「最後の1マイル」の問題を解決するツールです。ADKでエージェントを実装できても、評価・デプロイ・監視まで含めた運用には多くの手順が必要でした。agents-cliはこのギャップを埋め、エンタープライズグレードのエージェントを誰でも本番環境に展開できる環境を整えます。
今後はGoogle公式スキルリポジトリの拡充も予告されており、BigQuery・Firebase・GKEといった製品スキルがさらに追加される見込みです。GoogleはGemini CLIへのサブエージェント機能の追加なども進めており、コーディングエージェントのエコシステム全体を強化するロードマップを着々と実行しています。
AIエージェント開発に取り組む開発者・企業にとって、Agents CLIは2026年以降の標準的な開発ツールの一つになる可能性が高いでしょう。
参考リンク